手汗をこっそりズボンでぬぐって、きみと手をつなぐ。
何度繋いでも、この瞬間はやっぱりいつも緊張するのだ。
小さくてやわらかいきみの手は、指先だけがすっかり冷えきっている。
冷たいね、というと困ったような微笑を浮かべて、冷え性なのと呟いた。
じんわりと、きみの指先の冷たさに俺の体温が奪われていく。
いつのまにか季節は冬で、夜の闇の中で二人の息が白い。

「ねえ、すごい数の星だね。」

そう言われてはじめて、夜空を見上げた。
針で穴を開けたような小さな星粒が、空一面に散らばっている。
本当だと呟いた声と息が、真っ白になって大気中に消える。
でしょう、とまるで自慢するように言ってきみは笑う。
俺一人だったきっと、こんなにきれいな星にも気づかなかったんだろうな。
なんだか嬉しくなって、にやけてしまう。
繋いだ手を意味もなく大きく振って歩く。
明日もあさっても、くるかどうかわからない未来でも、
ずっと二人でこの夜空を見たいね。ううん、見ようよ。
そんな恥ずかしい台詞が頭の中でぐるぐる廻っている。
ああ、恋をすると人は格好悪くなるなあ。
俺はきみの前じゃいつだって、格好いい男でいたいのに。

「わぁ、流れ星だあ。」

へへ、願い事しちゃった。
そう言ってきみが、繋いだ手に力をこめて笑うから、
吹いてきた風が冷たすぎることも、
さっきまで色々悩んでいたことも、
なにもかもどうでもよくなってしまうんだよ。
なんて願い事したの?なんて、緩む頬を止められずに訊くと
耳まで真っ赤にして、「ずっと二人で一緒にいられますようにって!」なんて
そんなかわいいこと言うもんだから、ねえ?

「願い事なんてしなくたって、ずっと一緒だろ?」

二人そろって真っ赤な鼻と、真っ赤な耳。
きみはいつまでも、ぼくだけの一等星!























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