流れ星って、イコール星の死なのよ。
そんなものに願い事をする人間って、ばかだよね。

君はそう言って笑った。
とても静かに、声もたてずに笑っていた。
星のきらめく夜空の下、制服の半そでから伸びる真っ白な腕と
薄く開いた赤い唇の隙間から見える真っ白な歯。
君を見ていたら、なぜか何も言えなくなって
上手く動かない口を無理やり動かして「そうだね」とだけ言った。
スクールバッグをぐるんぐるんと振り回して、
僕の数歩先を、スキップしながら歩いていく。

本当は、君の目の端が赤くなっていたことや
涙の跡が頬に残っていることに、気づいていた。
でも、それを指摘して慰める術なんて僕は知らないから
気づかなかった振りをした。
そんな僕にも、君はきっと気づいていただろう。
昔から、僕のどんな嘘も君にはすぐバレてしまうんだ。

街灯が、真っ暗な夜道にぼんやりとした光を当てている。
その光の上に、君と僕の長い長い影が伸びる。
大丈夫だ、君はまだここにいる。
並んだ影を見て、僕は思わず安堵の溜息をついた。
なんて馬鹿なことを考えたんだろう。
本当は君はここにいないんじゃないか、なんて。
深く深く深呼吸をして、脳に酸素を送り込む。
そうして顔を上げると、いつの間にか君は道の上で立ち止まっていて、
口の端をゆるりと持ち上げて微笑んでいた。

「さっきはああ言ったけれど、あたし、星みたいに死にたいな。」

きらきら光って、それからしゅうっと駆け抜けて消えるの。
ねえ、素敵だと思わない?

僕は君の言葉を、つばとともにゆっくり飲み込んだ。
もう、「そうだね」とは言えない。
だって君の両目から零れ落ちる涙を見てしまったから。
ゆるりと歪んだ口の端から、嗚咽が漏れるのを聞いてしまったから。
夜の闇の中、静かに、だけど確かに響くSOS。
ああ、君の背後に広がる夜空に、またひとつ星が流れたよ。


「もう願い事をするのも嫌になっちゃった。」
そう言って君は、泣きながら笑った。



























inserted by FC2 system