深夜二時に目が覚めた。
どくんどくんと跳ね上がる鼓動の音はとても大きくて
真っ暗な部屋に響いてしまいそうだった。
よれよれのTシャツの心臓あたりをぎゅっと掴んで、
大きく深呼吸を、ひとつ、ふたつ。
なんだか、とても悪い夢を見たのだ。
それがどんな夢であったかは、もう忘れてしまったのだけれど
「なんだか、とても悪い夢」であったことは覚えている。
未だ静まらない心臓と、毛穴から噴出す汗がその証拠だ。

汗で濡れた服を着替えたかったけれど、
ひどく体がだるくって、起き上がろうという気も萎えてしまった。
目を瞑って荒れ狂う脳を沈めようと試みたけれど、
ああほんとに、深夜のテンションってのは怖いな。
しんとした闇の中で色んな想像が膨らんでしまう。

僕以外誰も目覚めることがなく、ひたすら夜が続く世界。
まず、電気とか水道とか全部止まっちゃうな。
あと、動物園の獣や水族館の魚は飢え死ぬな。
ああ、店の食料品もいつか全部腐っちゃうな。
それで、僕はずっとひとりで生きていかなきゃいけないよな。
誰もいない、一人ぼっちの世界。
続く夜の中で僕一人だけが目覚めている。
あんなに嫌いなネオンの光は消えてしまって、
皮肉にも夜空の星と月がよく見えるのだろう。

そんな世界は嫌だ、悪い夢の続きみたいじゃないか。
もちろんそれは僕の荒唐無稽なただの想像であって
本当に起こってしまうことなどありえないのだけれど、
それでも僕は怖くなった。
誰かの声が聴きたい、と切実に願った。
ほんとうに、深夜ってのは怖いな。
ゆっくりとまぶたを押し上げて、少し開いたままのカーテンを見る。
隙間から見える、遠くのネオンの光に安心して溜息をついた。

今日はこのまま眠れそうにないような気がする。
テレビの深夜番組でも見るか、それとも音楽でも聴こうか。
早く夜が明けてほしい。
朝のニュースの、女子アナの笑顔がむしょうに恋しい。
夜明けに聴こえる、名前がわからない鳥の声が聞きたい。
秒針よ進め、進め。
この夜から早く抜け出して、朝へ、朝へ。































inserted by FC2 system