僕が嘘笑いをすると、君はすぐ気づくんだ。
なんでわかるの?って訊くといつも
だってなんだかわかるんだもの、ってだけ答えて
それからふんわり笑うんだ。
無理して笑わなくっていいのよ。
そう言って、なにもかも見透かすような真っ黒の目で、
僕の心の奥をただじっと覗き込むんだ。
そうすると、僕はもう何も言えなくなってしまって
嘘笑いも上手くできなくなっちゃうんだ。
君って、もしかして超能力者なのかなあ。

僕は昔から、嘘をつくのも笑うのも下手で
「にんげんかんけい」ってやつが上手くできない。
だから、結構いろんな人からいろんなことを言われた。
本当はそういうことを言われるの、すごく嫌なんだけど
もっと嫌われるのが怖くて、何も言えずに笑うだけ。
そんな僕をみて、みんなはもっといろんなことを言った。
そういうことが続くうちに、すっかり友達を作るのが下手になった。
一人ぼっちになるのは、とても寂しかった。
教室で一人でお弁当を食べる時間が、大嫌いだった。
休み時間にみんなが喋ってるのを聞くのも、辛かった。
僕の居場所はここにはないんだと思った。

そんな僕と、弱くて何もできない僕と、
君はいつも一緒にいてくれる。笑ってくれる。
真っ暗な底なし沼に飲み込まれそうになると、
いつもほっそりした手を差し伸べて、僕を引き揚げてくれる。
会話が上手くできなくても、笑ったりからかったりしない。
女の子みたいってよく言われた、趣味の手芸も褒めてくれる。
君と一緒にいるときは、すごく自然に呼吸ができる。
嘘笑いなんかじゃなくて、本当に自然に笑えるんだ。


「あ、今すごくいい笑い方してる。」

「ほんとう?」

「うん、なんか、好きだなあって思った。」

「あ、ありがとう・・・。」


     (ぼくを しあわせ にする力を、もっている)























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