君と一緒に毛布にくるまって、窓の外を見ている。
目の前に置かれたふたつのカップは、同じ柄の違う色。
中に入っているココアはもうすっかり冷め切っていて、
一口飲むとやたら甘く、口の中がざらざらした。
隣のカップをそっと覗き込むと、中身は全部なくなっていて
残って乾いた粉だけが、底のほうに残っていた。
インスタントコーヒーでも淹れようかと思ったけれど、
毛布と君から離れたくないから、やっぱり止めた。

一晩中話していたけれど、本当に話したいことはまだ話せていない。
高校の同級生たちは今どうしているんだろうね、
そういえばあいつは結婚してもう二人の子供がいるんだよ、
俺たちもそろそろ結婚しようか、なんて。
机の引き出しにしまいこんだまま、渡されるのを待っている指輪のこと、
君が知ったらどう思うだろう。どんな顔をするだろう。
めじりを下げて口角を上げて、そうしてにっこり笑う君を想うと
自分の耳たぶが赤くなるのを感じた。
まだそう上手くいくと決まったわけでもないのにな。

空の色が、濃紺から淡い水色に変わっていくさまを見つめている。
もうすぐ朝日が昇り、どこかでだれかの目覚まし時計が鳴り響くだろう。
そうしてあたらしい一日が始まっていくのだ。
ふと隣にいる君の体温を腕に感じて、なんだか気持ちよくて目を閉じた。
毛布の中で抱きしめあって、少しだけ目を開けて
額をくっつけてちょっと笑って、それからまた、目を閉じた。
目を閉じるときには隣に君がいてほしい。
目を覚ますときにも隣に君にいてほしい。
そうだ、次に目を開けたときあの話を君にしよう。
ああ、なんだかとてもほわほわしてあたたかい。
境界線をさまよっていた意識がぷつんと途切れ、ぼんやりとした眠りに落ちた。


窓の外から朝日が差し込んで、ふたつの色違いのカップと
毛布にくるまって一緒に寝ているふたりを、朝の光で染めている。



い と し い 















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