午前・・・おそらく、3か4時。
ベランダから見る景色は、まだ暗い。
星があまり見えない空が、端のほうからだんだん明るくなっていく。
その様を、紫煙を吐き出しながら眺めている。
朝方は渋滞する道路も、まだ車は少なくて静かだ。
街は着々と、目に見えない新しい朝を迎える準備を始めている。

ブロロロ・・・
停止して、また動き出すその音。
新聞配達のバイクが走り、そしてまた止まる。
郵便受けに押し込まれるのは、暗いニュース盛りだくさんの新聞。
子供のころは熱心に見ていたテレビの番組欄にも、
やたら知識を試すようなクイズ番組の名前が並ぶ。
『こんなことも知らないなんて、』
そんな言葉が聞こえてくるような気がするから、
ああいう番組は好きじゃない。

ブロロロ・・・
バイクの音が遠のいていく。
夜明けの冷たい風を頬に受けて、まだ静かな街を
バイクで走り抜けるってのは、どんな気分なんだろうか。
お疲れ様ですと心の中で呟きながら、
だいぶん明るくなってきた空に向かって、煙を吐き出す。
ゆらりゆれる煙に似た雲がひとつ、流れていった。
きれいだ、と思う。
すっかり小さくなってしまった煙草を、
空いた缶ビールの中にねじ込んで深呼吸をひとつ。




世界る、







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