遠くの高校に行った友達と、久々に会った。
中学生のころ、とても控えめで大人しくて
休み時間はいつも本を読んでいたその子は
髪の色を茶に染めて、ばっちりメイクして
彼氏と撮ったプリ見せようかー?と言いながら
きれいに、隙間なくデコレーションが施されたケイタイ見せてくれた。

わたしは、未だに彼氏もいない。
眉だって太いままで、髪も黒いまま。
校則に違反しないように、教師に目をつけられないように
大人しく、地味に日々を過ごしている。
何も変わっていないね、と言われると
なんだか置いてけぼりにされた気分だ。

「わぁ、彼氏かっこいいじゃん!」

プリには、これまた同じように髪を染めて
にかっ、と笑っている男子と彼女が映っていた。
二人の真ん中には、大きなハートが描かれている。
羨ましい。すっごく羨ましい。
そして少しだけ、ほんの少しだけ、妬ましい。

「もうすぐ誕生日だから、プレゼント何にしようか迷ってんの。」

ふふ、と笑う彼女を見た。
周りにお花でも飛んでいそうな、かわいい笑顔。
昔と何も変わらないその笑顔は、相変わらずすてきだ。
変わることもあれば、変わらないこともあるんだな。
当たり前だけど、そう思った。


中学生の頃、二人で歩いた登下校の道。
雨の日も、晴れの日も、同じ制服を着て歩いた。
数学の授業がどんなに嫌いか、ということや
社会の先生はなぜあんなに額が光るのか、ということを
真剣に話し合いながら歩いた。
そんな道を今、高校生のあたし達は歩いている。

「・・・千歌ちゃんは、変わらないね。」

「内面は、ちゃんと成長したよ!」

彼女の茶色の髪が、夕焼けの光に照らされている。
あたしの目の端に映って、きらきら光っている。
うつむいた彼女の横顔は、すっかり大人で
メイクなんてしたことのないあたしは、ちょっとドキドキした。
彼氏さんと会うときは、もっと念入りにメイクするんだろうか。
眩しいのはきっと、太陽のせいだけじゃない。

「彼氏さんと結婚するときは、あたしも呼んでね。」

「どうかな?忘れちゃうかも。」

お互いに別れるまで、くだらない冗談を言い合った。
曲がり角のところで手を振って、去っていった彼女の後姿は
なんだか、胸をぎゅっと締め付けられるような感じがした。

わたしのスニーカーの音に、
彼女のブーツの音が、遠のきながらも重なって
オレンジの光に照らされたコンクリートの上で響いている。





変わること、
しかしそれでも
変わらないこと。














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