すっぱすぎる!


クラスの男子がくれた飴。
先に舐めはじめた友達は、おいしいと言っていた。
その言葉を信じて口にしたのが間違いだったんだ!
口の中にやってきた強烈なすっぱさの波のせいで
思わず目がうるんでしまう。
飴の袋に書かれた「魅せる!男の梅飴」という気合の入った文字。
ああそうですか、魅せるんですか・・・。

隣の席のユウタがあたしを指差して笑っている。
反応が面白すぎる、じゃねぇし!
この苦しみを知らないからそんなことが言えるんだ。
お前も一個食ってみろ!
声にならない声でそう言って、手当たりしだいに物を投げたけど
ナイスにキャッチされてしまってますます悔しくなる。
きっ、と睨みつけたら、鼻で笑われた。(失礼なやつだな!)

ああ、すっぱいすっぱいすっぱい・・・!
足をばたばたさせても、口にタオルを押し付けても
すっぱさの波は途切れることがない。
なんか泣きたくなってきた。
目の前がぼやけてきたぜ・・・。


「・・・お前さ、もう吐けばいいじゃん。」


声のするほうを見ると、ななめ前の席のシンジが呆れた顔をしていた。
ポケットティッシュを取り出してあたしに差し出している。
ああ、ティッシュがすごくきらきらして見える。
お前のその優しさが大好きだよ!「父さん」って呼びたいくらいだよ!
・・・あれ?今気づいたけど、何そのポケットティッシュ。
ボインな女の人の絵が描かれてるけど、何ソレ。
あ、うん、ごめん。見なかったことにするわ。

ティッシュを受け取ろうとして、やっぱり手が止まった。
この飴を吐くっていう選択肢は、今のあたしにはとても魅力的に思えた。
でも、でもそれは本当にしていいことなんだろうか。
だって一応もらったわけだし、確かにおいしくないけど捨てるのはちょっとなあ。


「ありがとう、でも、気持ちだけで、うれひいでふ!」


すっぱさで震える声でそう言ったら(後半は言葉にもなってなかったけど)、
シンジとユウタはあたしをじっと見て、
それからほぼ同時に大きなため息をついた。苦笑いのおまけつきで。
そうしてそれから数分後、あたしはこのときの自分の決断を
とても後悔することになる。


「おいしいと思うんだけどなあ。」

苦しむあたしを見て笑いながら、友達は本当においしそうに
「魅せる!男の梅飴」の2個目を口にしていた。


馬鹿なあたしと、

面白すぎる仲間たち。「シンジ、やっぱりティッシュくだはい・・・!」
「あー、はいはい。」
「マジ受けるわー。ほんと馬鹿だなお前。」
「この酸味がおいしいのに、もったいないなあ。」





































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