課外の授業がまったく面白くなかったので、
ふと、隣の席の子の横顔を見ていた。
窓側の席のその男子は不健康に色白で、細い。
腕なんてあたしの半分くらいの細さなんじゃない?
あ、いや、そこまではないか。
窓の外の草木の緑、夏空の青が彼の色の白さを引き立てる。
絵になりそうな景色だ。
まるで女の子みたいにまつげが長い。
うらやましいなあ。

そんなあたしの視線に気づいたのか、
そいつがこちらを見やりながら、口をぱくぱく動かした。
窒息寸前の金魚みたいだ。あ、この比喩は失礼だな。
なんだろ、なんか言いたいのかな。
注意深くじっと口元を見ていると、やっと言葉が読み取れた。


「なに見てんの」って言ってるんだ。


いや、別に何を見てるっていうわけでもなくて。
君を見てたんだよ、っていうと間違いなく誤解されるし。
ううん、なんて言おう。
そろそろ先生の目も気になるしなあ。
とりあえず、目に入った青空がすごくきれいだったから


「そらが、きれいだから、みてた」って言ってみた。


そうしたら、そいつは窓の外を横目でじっと見つめた。
窓の外の景色に初めて気づいた、って感じだ。
きっと授業中に余所見をすることなんてないんだろう。
真面目だねえ。あたしとは大違いだ。
ガラス窓にうつったその顔は、やっぱり白い。
不健康だなあ、ちゃんと食ってるかい?
そんな余計な(まるでお母さんのような)心配をしていたら
そいつはくるりと顔をこちらに向けて、
また、くちびるの動きだけで


「ほんとうだ」と、言った。


なんだか理由もなく可笑しくてぷっと吹き出すと、
「あーあ」ってな感じの顔をされた。
小さく首を横に振っている。
どういうことだ?
そう思って首を傾げたら、後ろから先生の怖い声。


「お前ら、仲いいなあ?ん?」





やかな季節

(そして、はわらう)













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