新しい制服に身を包んだ俺を、お前は指差して笑った。
格好いい制服なのに、似合わないなあ!って。
それに比べてあたし、似合ってると思わない?うちの制服、人気あるんだよ!
そう言ってスカートの裾をふわりと広げてみせる。
ばぁか、もう何年の付き合いだと思ってるんだよ。
お前が底抜けに明るい声を出して笑ってる時は強がっているときなんだと、
俺は知っている。
ほら、その証拠に目が潤んでるじゃねえか。
あーもうハンカチぐらい持っとけよ!
・・・はは、こいつの保護者みたいだなあ、俺って。
俺が他県の高校に行くって言ったあの日も、
お前、よかったねおめでとう!って何度も繰り返した後
ぼろぼろぼろ泣いてたっけ。
憶えてるか? 憶えてるよな。
ほらほらいい加減泣き止めって。
制服汚れるだろ。聞いてんのか、おい。
「だって、涙、止まらないんだよ。」
「お前、いつまで俺に心配かけさせんだよ。」
「一生。」
「ははっ、それどんな冗談・・・」
「冗談じゃ、ないよ。」
急に、大人びた目でじっと見つめられて、
俺は頭を撫でようとしていた手を慌てて引っ込めた。
その目が、あまりにも真剣だったから。
同い年のはずなのに、やけに大人びて見えて
ちょっと、驚いた。
「どういう意味だ?」
「心配かけてる間は、あんたはあたしのこときっと忘れない。」
そうでしょ?
いつものように、にっと笑う。
桜の花びらを乗せた風が、通り抜ける。
「・・・忘れねえよ。」
髪をくしゃくしゃにして笑う。
つられてお前も笑う。
気の抜けたカラスの鳴き声が、ファンファーレ。
ここからは別々の道だけど、
どうか、元気で。
さて、歩き出そうか。