昨日は土曜、今日は日曜。そして明日は月曜日。
がんがんと鈍く痛む頭を押さえて、
コップ一杯のぬるい水を空っぽの胃の中に流し込む。
早起きはどうも苦手だ。そう思ってちらりと見た壁掛け時計の針は10時を指している。
全然早起きじゃなかった。いいや、今日は日曜日だもの。
カーテンを開けると、外はもうすっかり明るかった。
ぐぐっと大きく背筋を伸ばすと、鳥の声と一緒に子供の声が聞こえてくる。
友達と遊びに行くのだろうか。楽しそうに歌を歌っている。
その元気をぜひ私に分けていただきたい。

水だけでは空腹に勝てず、冷蔵庫の中をがさがさと探ってみるけれど、
マヨネーズ、ケチャップ、牛乳、数日前に期限のきれた納豆の他は何もない。
最後に買い物をしたのはいつだっけ?
ずっと飲み会なんかで外食が続いていたから、仕方ない。
この頃は忙しくてスーパーのチラシも見ていなかったことを思い出す。
冷蔵庫がぶおおん、「早く閉めろよ!」と悲鳴を上げた。
頬に感じる冷気が、気持ちいい。
・・・はいはい今閉めますよ。

そうだ、あの人を起こさなきゃ。
大きな溜息を一つついて、ソファの上で死んだように眠ったままの彼の頭を
ぐしゃぐしゃと撫でる。なんか犬みたい。
まぶしそうに目を薄く開き、乾いた唇でおはようとつぶやく。
おはようと返すと、彼はへらりと笑みをうかべてあたしの手を掴み、
そのまままた寝入ってしまった。
なんて手のかかる人なんだろう。
でも、ちょっと楽しいな。
あたしの手は少し小さくて指が太いけど、彼の手は大きくて指が長細い。
ごつごつしたその手は、小さな子供みたいな体温。
じんわりと手のひらから体中にあったかさが伝わる。
やばい、また眠くなってきた。もう10時だっていうのに。

「ほらほら、起きなよ。」
「・・・おはよう。」
「さっきも言った。」
「・・・そうだっけ?」
「そうだよ。ねえ、朝ごはんの材料買いに行こう。」
「・・・もうちょっとだけ、」

一緒に寝ようよ。
声には出さずにそう言って、彼はまたソファに顔をうずめる。
ああもう、本当に子供みたいだなこの人は!
乱暴に彼のほっぺたをつねってみたけれど、何の効果もないようだ。
今日の朝ごはんはホットミルクと納豆のマヨネーズとケチャップ和えでいいだろうか。
ああ、ちがう。
朝ごはんじゃなくて、もう、昼ごはんじゃないか。
とりあえずこの手を離してくれなきゃ、買い物に行けない。
ははっ、なんか笑える。
あたしも彼も、お互いしっかり手を握りあっているのだ。
どちらも相手の手を離そうとしない。
くすくす笑っていたら、彼がうっすらと目を開けてほほえんだ。

やっぱり、あと少しだけ寝ることにしよう。そうしよう。
「食う、寝る、遊ぶ」は人間の三大欲求だ。
あたしは自分の欲と彼にはとっても弱い。自覚はあるさ。
一人でも狭いソファの上で、彼とあたしは体を寄せあう。
彼の短い髪がちくちくと顔に当たって、くすぐったい。
 

 
君が笑う。 あたしも笑う。






















 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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