死ぬ、って結構あっけない。
この世界から、一つの灯火がしゅんと消えるだけなのだ。
灯火が消えたとき、あたしはこの世界から消えて

どこか別のところへ行ったり
なにか別のものへ生まれ変わったりするのかもしれない。

「で、結局お前は何が言いたいの?」

「わかんない?」

わかるわけねーだろ、と言って君はまた煙草を手に取る。
白色の煙が、君の口から吐き出される。
濃い青色の天井に広がるそれは、雲のように見えた。

「つまりね、あたしが言いたいのは」

死ぬって寂しいね、ってことなの。
真剣な顔でそう言うあたしを、鼻で笑って
君は煙を宙に漂わせる。
ふわふわしてるこの煙には、たくさんの有害物質が含まれていて
あたしに恋をさせる物質も含まれているんだ。きっと。

「子供か、お前。」

「子供? あー、まぁ18歳だから成人はしてないね。」

冗談を軽く流して、あたしの目を見つめる。
真っ黒な瞳。
どこか遠くを見ているような、ぼんやりとした光。
その中に映る、寂しげでちっぽけなあたし。

「もしお前が、俺より早く死んだら」

あたしの表情がどこか暗かったのに気付いたのかな。
君は、にかっ と
まるで子供のように笑う。

「その時は、俺の心の中に来いよ。」

どこにも行かずに
生まれ変わったりもせずに。
神様にバレないように、そーっとな。
そうすれば、お前は寂しくないだろ。
君の瞳に、優しい光が宿った。

地球上に太陽光が降りそそがなくなって
あたしはこの笑顔だけで生きていける気がするよ。

「ありがと。」

本気で、心の中に行くからね?
笑うあたしを見つめながら、 ああ と言って君は笑う。
その瞳が、好きだ。

永遠に一緒
(なんて素敵な冗談なんだ。)




















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